セミナーより2

AAVベクターによる遺伝子治療
村松 慎一
(自治医科大学 内科学講座 神経内科部門、東京大学医科学研究所 遺伝子・細胞治療センター )

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは, 神経細胞に効率よく遺伝子を導入し, 長期間(15年以上)発現が持続する. 神経科学の基礎研究では, Optogeneticsにおける光感受性チャンネル分子の発現や, in vivoゲノム編集におけるCAS9導入ベクターとしても頻用されている. これまでパーキンソン病, 血友病, 網膜色素変性症など183件の臨床試験が実施されているが、ベクターに起因する重篤な有害事象は報告されていない. Parkinson病に対しては, L-dopaをドパミンに変換する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)の遺伝子を被殻へ導入する遺伝子治療の臨床研究が行われている. この治療が運動機能の回復に有効なことは, AADC欠損症の小児に対する遺伝子治療でも示された. 血液脳関門・髄液脳関門を通過し中枢神経の広範な領域に遺伝子導入可能なAAVベクターが開発され, 筋萎縮性側索硬化症(ALS)やムコ多糖症などの遺伝子治療が臨床開発段階に入っている. 今後, 小児の多くの疾患に遺伝子治療の適応が拡がると期待される。