セミナーより1

抑うつ発症のリスクファクターとしてのトリプトファンーキヌレニン経路の変動
斉藤邦明
(藤田保健衛生大学大学院医療科学専攻 病態制御解析学/先進診断システム探索研究部門)

トリプトファン(Trp)をキヌレニン(KYN)に代謝する酵素としてはIndoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)とTryptophan 2,3-dioxygenase(TDO)が知られている。どちらも同じ経路を代謝する酵素であるがTDOは主に肝臓に存在しグルココルチコイドなどのホルモンで誘導される。一方、IDO1はインターフェロン(IFN)-γなどの種々炎症性サイトカインやリポポリサッカライドによって酵素誘導され、抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージ等)をはじめ上皮細胞や腫瘍細胞などで強発現する免疫関連分子として、さらにはNOとの相互作用することで知られる。また、Trp代謝産物は様々な生理活性を有し、キヌレン酸(KA)はα7ニコチン受容体のアンタゴニスト、3ヒドロキシキヌレニンはサイトカイン産生調節などの免疫系に関与する。また、KYN及びKAは、ダイオキシンに代表される様々な外因性・内因性由来の環境応答因子として作用する芳香族炭化水素受容体(AhR)のリガンドとしての役割も報告されている。すなわち、Trp-KYN経路の代謝が変動することにより、様々な生体反応を引き起こす可能性があることを示唆している。我々は、遺伝子組み換え動物および臨床サンプルの解析により、炎症性サイトカインと抑うつ発症との関係について明らかにした。本セミナーでは、Trp代謝関連酵素の遺伝子欠損動物モデルを用いた病態解析および臨床サンプルの解析結果を紹介し、炎症性サイトカインと抑うつ発症との関係について述べさせていただく予定です。また、脳神経疾患におけるTrp代謝関連酵素が創薬のターゲットとして有用かどうかについても議論させて頂きたい。