セミナーより3

レット症候群の新たな分子病態メカニズム
辻村 啓太
(名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学分野 高等研究院[兼務])

レット症候群は女児に起こる進行性の神経発達障害であり、自閉スペクトラム症、知能や言語・運動能力の発達遅延、てんかん、中枢性呼吸障害等を呈する、約10,000人に1人の頻度で発症する指定難病です。その発症は、X染色体上の単一遺伝子MECP2の変異により発症することが知られています。さらに、このMECP2遺伝子変異は、統合失調症や自閉スペクトラム症等の種々の精神疾患の発症にも深く関与することが報告されています。したがって、これらのMECP2異常から精神神経疾患に至る病態の全容が解明されれば、より広範な精神神経疾患の分子病態の理解や治療法開発に繋がることが期待されます。しかしながら、MECP2変異により精神神経疾患が引き起こされる分子基盤は依然として大部分が明らかになっていません。
本セミナーでは、最近我々のグループが明らかにしたレット症候群の原因遺伝子産物MeCP2タンパク質の新規分子機能、およびレット症候群病態に重要なシグナル経路について紹介し、我々が同定したMeCP2の標的因子の生理的役割、ならびにそれらを基盤とする新たなレット症候群の治療戦略の可能性について議論させて頂きます。