セミナーより4

バリン代謝異常症の病態解明と治療へのアプローチ
山田 憲一郎
(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 主任研究員)

遺伝学部では、出生時に筋緊張低下、発達遅滞、両側基底核病変等が見られる複数のLeigh脳症患者の遺伝子解析を行い、アミノ酸バリンの代謝経路にある酵素であるshort-chain enoyl-CoA hydratase (ECHS1)や3-Hydroxyisobutyryl-CoA hydrolase (HIBCH)の遺伝子に、病因となる遺伝子変異を同定しました。同定した変異は、ECHS1とHIBCHの酵素活性を低下させ、患者の細胞内ではミトコンドリア内にバリン代謝経路の中間産物であるmethacrylyl-CoAが蓄積すると考えられました。methacrylyl-CoAは細胞内でチオール(SH)化合物(還元型グルタチオン等)やタンパク質のSH基と不可逆的に結合するので、細胞に重篤な機能障害を生じる化合物です。すなわち、これら2つのバリン代謝異常症では、methacrylyl-CoAの蓄積が発症の主要な原因と考えられました。また、本症の治療法の開発を目指して、1)methacrylyl-CoAの産生を減らす。2)methacrylyl-CoAを代謝(無毒化)する。という発想に基づいて解析を行いました。これらの結果の本症の治療法への可能性について議論させていただきます。