セミナー抄録

2018年セミナーの抄録を一部
掲載します。

セミナー開催の詳細は前記事を参考に
してください。
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<精神疾患のグルタミン酸仮説>

田中光一
(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子神経科学)

グルタミン酸は哺乳類の中枢神経系において記憶・学習などの高次機能を調節する主要な興奮性神経伝達物質として知られている。一方、過剰なグルタミン酸は、グルタミン酸受容体の過剰な活性化によりグルタミン酸興奮毒性と呼ばれる神経細胞障害作用を持つことが知られている。近年、グルタミン酸興奮毒性による脳の興奮性亢進が、筋萎縮性側索硬化症・アルツハイマー病・パーキンソン病・ハンチントン病・緑内障などの神経変性疾患、うつ病・統合失調症・自閉症スペクトラム症・てんかんなどの精神疾患の発症に重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。グルタミン酸興奮毒性の原因として、グルタミン酸の放出亢進、グルタミン酸受容体のシグナル伝達の亢進、グルタミン酸の除去障害が知られている。これらのなかでも、グルタミン酸のシナプス間隙からの除去障害が主要な精神疾患で多く報告されている。グルタミン酸輸送体は、グルタミン酸の除去を担う主要な遺伝子であり、哺乳類の中枢神経系において、5種類のサブファミリーが単離されている。この中で、アストロサイトに存在する2種類のグルタミン酸輸送体slc1a2 (GLT1), slc1a3(GLAST)が、シナプス間隙からのグルタミン酸除去に主要な役割を果たしている。本講演では、様々な遺伝子改変モデルを用い、グリア型グルタミン酸輸送体の機能異常が主要な精神疾患の発症原因に成り得ることを発表する。また、モデル動物を用いた精神神経疾患研究の問題点と今後の展望についても言及する。